2015年5月11日より、ジュンク堂書店池袋本店7階理工書にて、『大雪山-神々の遊ぶ庭を読む』刊行記念・大塚友記憲写真展と同時に「大雪山ブックフェア」を開催致します。
合わせて、写真文化首都「写真の町」ひがしかわ 写真文化首都創生課総合戦略創生室より、《大雪山にまつわる貴重な文献・資料》をお借りし展示致しております。
ぜひお越しください。
展示内容一覧は、以下の通りです。
『大雪山』にまつわる文献・資料展示内容一覧
平成27年5月11日
ジュンク堂書店池袋本店・七階理工書
ジュンク堂書店池袋本店・七階理工書
1.アサヒグラフ臨時増刊 國立公園號
朝日新聞社、昭和7年10月25日発行
- 温泉、公園施設、人がかかわるものは一切存在しないただ手つかずの自然が紹介され、羽衣の滝の写真などが圧巻だ。
- 大雪山について「天公何ぞ獨り大雪の一山に厚きや」の記述がある。
2.北海タイムス
昭和7年10月9日(日曜日)付
- 「國立公園候補地 選に入った本道の二名勝」を全ページ両面を使って特集している。
- 「大雪山 秀麗な山獄で一大高原を形成 其間に介在の絶景 層雲勝仙の二大峡谷」。層雲は現在の上川町層雲峡温泉、勝仙は現在の東川町天人峡温泉のこと。
3.北海道ニ於ケル國立候補地調査概要公園
北海道廳拓殖部、昭和6年6月
- 内務省が北海道の国立候補地として選定したのは阿寒、登別、大沼の3景勝地。「大雪山ハ交通機関不便ナリシ爲洽ク世人ニ知ラレサリシカ(中略)三候補地ニ加ヘテ最近道廳ニ於テ調査セル景観ノ概要ヲ附記スル事トセリ」。
大雪山は三候補地のおまけで付記された。(序に書いてあります)
4.山岳 第拾貮年第二・三號
日本山岳會、大正7年8月5日
- 小泉秀雄の「北海道中央高地の地學的研究」、つまり、大雪山の調査報告で日本山岳会会報「山岳」をすべて埋め、2号では収まりきらず3号との合併号となった。「山岳」が会員でもない小泉の寄稿を破格の扱いとしたわけで後にも先にもこのような特別号はない。
- 小泉が大正6年に作図した20万分の1地図が折りこまれ、ここには「羽衣滝」の記入があり、「大町桂月が大正7年に命名」と言う通説には疑義が生じる。
5.大雪山 登山法及登山案内
小泉秀雄著、大雪山調査會、大正15年7月25日
- 大雪山のバイブル的な存在。現在の北海道旭川東高等学校の教師だった小泉が山案内人、成田嘉助と共に未知の大雪山を探検、調査し、大雪山の山名、湿地名などを彼が全ての名前を付け、整理した。研究成果の緻密な報告書でありながら当時の大雪山登山の心得を的確に示している。
- 山岳のスケッチ、地図、写真も豊富に入れ、圧巻の一冊。
6.大雪山及石狩川上流探検開發史
河野常吉著、大雪山調査會、大正15年8月5日
- 河野常吉は北海道史を編纂した歴史研究家で、江戸時代からの探検記から大町桂月の「層雲峡より大雪山」など文献を引用している。
- 河野常吉は大雪山、旭岳などの名称を巡って小泉秀雄と新聞紙上で論争した。
7.大雪山の洗礼 四十年前の黒岳石室宿泊者名簿
層雲峡観光協会、昭和40年7月
- 地方史編纂中の都竹一衛が資料探索中に黒岳石室の宿泊者名簿を見つけ、時・処・人の三つの条件を備えた貴重なノンフィクションであると考え、謄写版で書き写した。童謡詩人・野口雨情の名もある。
8.日本名勝地誌 第九編 北海道之部
松原岩五郎著、東京博文館、明治32年9月23日
- アイヌ語で「ヌタカウシュペ」と呼ばれていた山に突然のように「大雪山」の名前が登場した伝説的な本。しかも、108㌻には「だいせつざん」とふり仮名をふり、109㌻には「たいせつざん」とふってあるため、濁音の「だい」か、清音の「たい」か、論議の種をまいた。
9.桂月全集別巻
大町桂月著、桂月全集刊行会、昭和4年10月25日
- 明治、大正期に全盛を誇った文筆家、大町桂月は請われて黒岳から旭岳へ縦走し、「層雲峡より大雪山」を発表、層雲峡や大雪山の名前が広く知られるきっかけを作った。
10.牙王物語
戸川幸夫著、角川書店、(上)昭和32年10月20日、(下)昭和33年1月5日
- 動物文学を確立した作家、戸川幸夫が大雪山と東川村を主舞台に、オオカミと犬の混血「キバ」が人食い熊「ゴン」と対決するまでの波乱万丈の物語。「キバ」がただ一人、気持ちを通じていた東川村の牧場の娘、早苗が洞爺丸台風の夜、悲劇を迎える。毎日新聞夕刊に「山のキバ王」で連載され、新聞では『牙』の漢字が使えなかったが単行本で漢字を使い「牙王物語」と改題した。
11.少年マガジン 牙王
戸川幸夫原作、石川球太画、講談社、昭和40年5月9日〜昭和41年3月27日
- 「牙王物語」の漫画化で、大雪山の風景から漫画は始まり、大雪山中に悲しみをこらえて消えて行くキバの姿で漫画は終わる。
12.牙王
戸川幸夫原作、石川球太画、大都社、①②昭和59年6月20日③59年7月20日
- 出版各社が石川球太の漫画「牙王」を単行本として競って発行した。
13.牙王物語
戸川幸夫著、国土社、(上)2011年11月30日 (下)2011年12月20日
- 「山のキバ王」を戸川幸夫が児童書向けに書き改めた。巻頭に北海道地図と大雪山連峰の山の位置が分かる地図を入れてある。
14.オホーツクの海に生きる
- 彦市じいさんの話
戸川幸夫原作、文 戸川文、型染版画 関屋敏隆、ポプラ社、1996年7月
- 戸川幸夫は「山のキバ王」執筆のため、大雪山を丹念に調査した。その際、赤岳で山案内人に「知床で一冬、猫と暮らす孤独な老人がいる」と聞き、その情報を元に知床の番屋を戸川は訪れ「オホーツク老人」を書いた。森繁久弥が主演で「地の果てに生きるもの」を映画化(東宝)、ロケ隊が地元を離れるお別れに森繁が歌った「知床旅情」は加藤登紀子でさらにヒット。
- 戸川幸夫の長女、文(あや)は父の「オホーツク老人」を40年ぶりに絵本として出した。二女、久美は認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金理事長として野生動物の保護活動に奔走。半世紀前、戸川幸夫の奮闘で「イリオモテヤマネコ」が新種であることが分かり、西表の絶滅危惧種イリオモテヤマネコの保護にも久美とNPOは住民、子どもたちと一緒に取り組んでいる。
15.野獣撮影
戸川幸夫著、山と渓谷社、昭和48年3月15日
- 著者が「山のキバ王」の執筆で大雪山に魅せられ、その後、大雪山に夏になると訪れ、白雲岳で見た大きなヒグマに驚き、数年、観察を続けた。オホーツク海での冒険など、自分の足で確かめて書く作家、戸川幸夫の面目躍如の一冊。
16.武侠世界増刊 山獄踏破號
針重敬喜 発行、編集者、大正11年7月20日
- 仰々しい題名の山岳・冒険雑誌。参謀本部陸地測量部技師、中島摧が「濃霧に襲はれた石狩岳の六日」を寄稿した。旭岳の一等三角点測量にあたって、隣の山へ作業員とアイヌら三人が向かったが、濃霧に巻かれて身動きとれず、山中で六日間、死が迫った遭難記。従者のアイヌの知恵に救われる。
17.絵はがき
18.大雪の蝶
田淵行男、朝日新聞社、昭和53年10月30日
- 大雪山は国の天然記念物であり、飛び回っている蝶にも天然記念物が多い。ウスバキチョウ、ダイセツタカネヒカゲ、アサヒヒョウモン、クモマベニヒカゲなどの蝶を克明に撮影した大作。
19.ウスバキチョウ
渡辺康之著、北海道大学図書刊行会、2000年4月25日
- 日本には約235種の蝶が分布していて、著者は「最も人気が高い種類の1つがウスバキチョウであろう」と見る。ウスバキチョウの生態を美しいカラー写真でまとめ、詳しい解説文を載せている。
20.大雪山越冬記
渡辺康之著、自費出版、1991年3月30日
- 国内、中国、朝鮮半島などの蝶を撮り、多彩な活動をしている著者が白雲岳の避難小屋で越冬を試みた珍体験談。手作りの200冊で、古本としても手に入れるのが難しい。
21.大雪山を主舞台にした小説
①樹と雪と甲虫と
木野工著、光風社書店、昭和47年6月20日
旭川出身の作家、木野工が洞爺丸台風になぎ倒された風倒木処理を素材に、野望の果てに夢を失って錯乱状態になっていく青年実業家を描いた。
②ロビンソンの末裔
開高健著、中央公論社、昭和35年12月15日
物語は、東京空襲が激しくなったころ、北海道の入植募集に応募して大混乱の上野駅を出発、青函連絡船内で終戦の玉音放送を聞き、その後、旭川奥地の開拓で辛酸をなめた移住者たちの苦闘を描いている。大雪山の麓が小説の村となっている。大雪山を眺望する東旭川米飯に「東京部落」といわれた名残がある。
③重い神々の下僕
三好文夫著、潮出版社、昭和49年5月25日
著者は旭川を代表する作家のひとりで、アイヌ文化を愛し、山を愛し、愛山渓で亡くなった。「重い神々の下僕」には表題の短編を含め4 編が収められていて、その中の「山に消える」が大雪山 を舞台にする一遍。山を知り尽くしているアイヌ青年ウパロについて冬山に入った民芸舎経営の小柳が遭難する。行方知れずの後も電話をかけてくる小柳の声におびえたウパロもまた大雪山に消えてゆくストーリー。ギクリとする結末が待っている。
④峰の記憶
渡辺淳一著、文藝春秋、昭和53年9月25日
大雪山系を貫く縦貫道建設に携わる北海道開発局の現場所長、29 歳の若き技官が主人公。工事を進めながら自然保護への思いも徐々に強くなっていくが、機材を吊り上げていたヘリコプターが墜落、工事は中断、現場所長を解任される。大雪縦貫道を題材にしたフィクション。
⑤泥流地帯
三浦綾子著、新潮社、昭和52年3月25日
北海道新聞日曜版に昭和51 年1 月4 日から9 月12 日まで連載され、昭和52 年3 月に新潮社から発行された単行本。大正15 年5月、十勝岳噴火、家も学校も恋も泥流が一気に押し流す。 当時の生活が読み手の心に響き、懸命に生きる兄弟を通して人生の試練とは何かを問いかけ、天災と人を描いた。
⑥続 泥流地帯
三浦綾子著、新潮社、昭和54年4月15日
十勝岳噴火の泥流で惨憺たる苦境に立つ開拓農家を描いた「泥流地帯」の続編。苦難はなお続き、重ねて一家に襲いかかる。
⑦十勝泥流
佐藤喜一著、玄文社、昭和21年7月10日
著者は旭川で活躍した文学者。短編「十勝泥流」は、少年と水車小屋守の少女がザリガニ採り遊びから淡い、切ない思いが生まれていくものの、十勝岳爆発の泥流で少女は行方不明となる。成人してもなお少女の面影を求めていく一遍。
⑧自我の構図
三浦綾子著、光文社、昭和47年7月10日
物語は、旭川に暮らす国語の教師が趣味の領域を超え、絵を書いているが為に才能・嫉妬などから、同僚の美術担当教師との間に葛藤が生まれる。まっすぐな道を天人峡へ向かう車のシーンから小説は始まり、羽衣の滝が物語の重要な設定となっている。
⑨毒麦の季
三浦綾子著、光文社、昭和53年10月25日
ターちゃん(小学生の達夫)の両親は、愛人問題で離婚状態になっていたが、層雲峡で行われる火祭りを見に行ったときに、ターちゃんは取り返しのつかない事故を起こしてしまう。昭和46 年、「小説宝石」に発表した。
⑩青い棘
三浦綾子著、学習研究社、昭和57年4月1日
小説の中に、大雪山や白銀温泉などの風景が随所に登場し、最後の章は『殉難碑』。東川町の墓地にある中国人殉難烈士の墓が小説の重要なポイントになっている。
⑪石北峠
城山三郎著、文春文庫、1978年6月25日
層雲峡温泉の旅館で働く順子の物語。初冬の温泉宿は客が減り、従業員も休みを取って宿を離れるが順子は残り、バスで人気のない石北峠へ向かう。その夜、宿では泊り客に異変が起きる。昭和38年「小説新潮」9月号に発表、表題「怒りの標的」の文庫本に収められた。
⑫和人のユーカラ
深沢七郎著、中公文庫、1982年11月10日
「大雪山は決して恐ろしい山ではない」という書き出しだが、奇妙で不思議な遭遇、幽霊タンポポの名を教えてくれた大男のアイヌのような人との出会いが展開されていく。昭和55年12月「海」に発表、表題「みちのくの人形たち」の文庫に7 編とともにおさめられた。
⑬夜の傾斜
船山馨著、河出書房新社、昭和55年8月4日
山とは一見無縁の企業小説だが、ラストに、主人公の麻生康子と矢代七郎が愛別岳で猛 吹雪に巻かれて壮絶な凍死を迎える。
⑭造材飯場
宮之内一平著、私家版(北方公論社)、昭和33年10月30日
著者は1926 年、東川尋常小学校を卒業した東川ゆかりの作家。「造材飯場」は大雪山麓の造材が盛んな町(石北線A駅、仮に上田町と呼ぼうと書いてある)を舞台に、厳しい冬山の造林作業現場で事故やストライキが仕組まれ、ミカド飲食店の女性が絡む人情物語。「サンデー毎日」の大衆文芸佳作(1955 年)となった著者の代表作。この本には東川が舞台と推 量できる短編「冬の山」など16 編を収録。
22.きらきら
文…谷川俊太郎 写真…吉田六郎、アリス館、2008年11月20日
- 旭岳温泉の雪洞で撮影した雪の結晶の美しい写真集で、詩人・谷川俊太郎の文章で、幼児にも楽しめる「神様からの贈りもの」のような絵本となった。
23.雪の結晶
吉田六郎撮影、吉田覚解説、平凡社、2001年1月24日
- 吉田六郎は旭岳温泉の雪洞にこもって、独自に開発した「1光源2色照明法」により、降る雪の結晶を撮影した。子息の覚がポストカードを本にした。
◎作成
写真文化首都 「写真の町」ひがしかわ
写真文化首都創生課総合戦略創生室
西原 義弘
写真文化首都創生課総合戦略創生室
西原 義弘