西洋政治理論史(上)
日本における西洋政治思想史研究の金字塔
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- 関連ワード
- 西洋政治理論史(上)
- タイトル
- 著者・編者・訳者
- 中金聡・厚見恵一郎編
- 発行年月日
- 2005年 9月 8日
- 定価
- 6,050円
- ISBN
- ISBN4-7948-0673-6
- 判型
- A5判上製
- 頁数
- 360ページ
著者・編者・訳者紹介
藤原保信(ふじはら・やすのぶ)
1935年生まれ、94年没。元早稲田大学政治経済学部教授。政治学博士。政治思想史専攻。
『自由主義の再検討』(岩波新書、1993)など著書多数。
1935年生まれ、94年没。元早稲田大学政治経済学部教授。政治学博士。政治思想史専攻。
『自由主義の再検討』(岩波新書、1993)など著書多数。
内 容
〈藤原保信著作集〉第3巻は、政治思想史家藤原の代表作である大著『西洋政治理論史』(新装版、1998年)を上下2巻に分け、前半部分にあたる序論およびプラトンからホッブズまでを収録した。後半のロックからウェーバーまでと結論は、本巻につづく第四巻として配本を予定している。
国家論を中心に叙述する政治思想史研究書の通例とは異なり、『西洋政治理論史』で藤原は各時代の支配的な形而上学的前提から説き起こし、代表的な思想家11名の政治理論を自然観の巨大な変遷史のなかに位置づけて解釈する。有機的全体としてのコスモスを存在論的前提として共有しながら、異なる理想国家を構想したプラトンとアリストテレス。創造と終末によって画された歴史をみすえ必要悪としての国家を説いたアウグスティヌスと、理性と信仰の調和をもとめてアリストテレス政治哲学をキリスト教的に再構成したアクィナス。秩序安定の技術として政治を再発見しつつ、なおも実現可能な理想の政体を探求したマキアヴェリ。その理論的・実践的暗示を極限まで追求し、ついに自然・人間・国家のトータルな機械論的理解を完成したホッブズまで。古典的なテキストとの対話をつうじて、藤原は時代の危機とそれぞれに格闘した思想家たちの理論的営為とその現代的意義とを明らかにする。しかし同時に、ホッブズにおいて絶頂に達した近代的な思惟の覇権によって現代世界が深刻な危機に見舞われていることを憂慮し、この危機に対処する新たな政治理論の構築こそが現代のわれわれの責務であると主張する。
『西洋政治理論史』の今日なお色褪せない価値は、思想史的テキストの緻密な解読と実践的かつ規範的課題とを結びつけるこのユニークで真摯な著者の問題意識にあり、またそれを共有する読者に自分で思索することをうながす点にある。『西洋政治理論史』は、日本における西洋政治思想史研究の金字塔であるとともに、現代世界へのアクチュアルな提言で知られる「藤原政治哲学」が、歴史と理論のあいだでの緊張にみちた往還運動をくりかえしながら生成した過程を伝える証言にもなっている。読者はそこに、過去の思想を読むことに今どのような意味があるのかという問いへのひとつの雄弁な答えを見いだすだろう。
関連書籍:
『藤原保信著作集 第6巻 大正デモクラシーと大山郁夫』
『藤原保信著作集 第9巻 自由主義の再検討』
『藤原保信著作集 第10巻 公共性の再構築に向けて』