ブルターニュ紀行
近代文学の帳を開いた文豪フローベールの若き日の旅行記。本邦初訳です。
近代文学の帳を開いた文豪の若き日の旅行記。独創的視点と文体の胚胎、「作家誕生」過程。
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- 関連ワード
- ブルターニュ紀行
- タイトル
- サブタイトル
- 野を越え、浜を越え
- 著者・編者・訳者
- フローベール(ギュスターヴ・フローベール)著
- 渡辺仁訳
- 発行年月日
- 2007年 4月 10日
- 定価
- 3,520円
- ISBN
- ISBN978-4-7948-0733-5
- 判型
- A5判上製
- 頁数
- 336ページ
著者・編者・訳者紹介
著者-Gustave FLAUBERT(ギュスターヴ・フローベール、1821-1880)-
フランスの作家。
『ボヴァリー夫人』『サランボー』『感情教育』などの作品によって写実主義文学を確立したとされるが、その革新的な小説技法や言語観は現代文学にも影響を与えている。
フランスの作家。
『ボヴァリー夫人』『サランボー』『感情教育』などの作品によって写実主義文学を確立したとされるが、その革新的な小説技法や言語観は現代文学にも影響を与えている。
内 容
「1847年5月1日、午前8時半、ひとつに溶け合って以下に続く紙をインクで汚すことになる2個の単子は、ヒースやエニシダに囲まれて、あるいは広漠とした砂浜の波打ち際に行ってくつろぎたいと思い、パリをあとにした。」本書の冒頭の一文に言われる「2個の単子」とは、ギュスターヴ・フローベールとその友マクシム・デュ・カンである。ふたりの青年はまさしくこの日この刻限に、開通間もない鉄道に乗り込んでパリを出発し、ロワール河流域を経て、ブルターニュ地方へと足を踏み入れる。
ブルターニュ—それは今日でもケルト文化の影響を色濃く残す、フランスでも特異な一地方であるが、19世紀の中葉には、パリを中心とした文化圏からはさらに隔絶した、〈異世界〉であった。文学的野心に燃えるふたりの無名の若者は、何かに憑かれたかのように、この辺境の地を、馬車、舟、そしてとりわけゲートルを巻いた健脚で、移動して回る。文学を志す者の当時の嗜みとして、旅行中にとられた詳細なメモをもとに、共著をめざして旅行記が書かれる。結局日の目を見ることのなかった旅行記の、フローベール担当分を訳出したのが、本書『ブルターニュ紀行』である。
そこにいるのは、創作を試みつついまだ己の文体の発見に至らない、ロマン主義の残映のうちにある文学青年であるが、その豊かな感性と冷徹なまなざしが〈異質なもの〉にじかに触れ、その経験が文章化されようとするとき、ここに、『ボヴァリー夫人』以下の後年の傑作の誕生を可能とするような、真に独創的な視点と散文が胚胎する。読者は、ユニークな旅の物語を味わいながら、作家が作家になる過程に立ち会うことになろう。