カップル、家族、コミュニティからグローバル化経済の領域まで、人間社会の循環的関係を鮮やかに析出! 贈与交換論の最先端議論

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関連ワード
悪循環と好循環
タイトル
サブタイトル
互酬性の形/相手も同じことをするという条件で
著者・編者・訳者
マルク・R・アンスパック著
 
杉山光信訳
発行年月日
2012年 2月 7日
定価
2,420円
ISBN
ISBN978-4-7948-0891-2 
判型
四六判上製
頁数
224ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Mark Rogin ANSPACK(マルク・R・アンスパック)-
1959年生まれ。
ハーバード大学を優等(B. A. cum lauda)で卒業し、1991年にはスタンフォード大学で学位を得ている。
現在はパリの理工科大学に設置されている応用認識論研究センター(CREA)の研究員。
最近著作に『模倣されるエディプス』(2010)がある。

内 容

 結婚式に呼ばれれば祝儀をもっていくし葬式の参列には香典を持参する。そして祝儀や香典には半返しや七分返しでお返しがくる。さまざまな機会に贈り物のやりとりをするのはいうまでもない。能率化が求められる現代なのに、なぜ私たちはこんな手間をかけたことをするのだろうか?
 相手にダメージを与えるときでも同じことがみられる。書評で悪く書けば同じ仕打ちを受けるし、世界には「殺した者は殺せ」という復讐の慣行をもつ文明が近年まで存在したのも知られている。やればやり返される。このことは社会経済学では贈与交換ないし互酬性として知られている。市場での交換、国家(中央政府)による再配分とならんで社会経済の内には贈与交換の原理で動いている領域があるというのだ。けれども社会経済学で扱う互酬性は経済という狭い分野に限られている。
 相手も同じことをする条件で何かをするという行動は、私たちの生活でどこにでも見られる。たとえば一緒に生活するようになった男女のカップルにおいては、今晩の食事の後の皿洗いをどちらがするのか、というところにまで入り込んでいる。些細なようだが、このことはそう簡単には無視できない。
 贈与論の理論はマルセル・モースの「贈与論」に始まる。本書ももちろんモースの議論を取り上げるが、他のさまざまな議論も取り入れて拡張を試みる。限定交換と一般交換についてのレヴィ=ストロースの議論、あるいはベイトソンのダブルバインド論を導入すると、読者が想像もしなかったような形でカップルや家族の関係からグローバルな市場の変動まで、その政治性を含めた相互性の関係の広がりが見えてくることになる。
 相手も同じことをする条件で行動するときには循環的関係が出現するが、たいていは悪循環で私たちはその環に閉じ込められるし市場の変動(これも悪循環の一つ)に翻弄される。本書でアンスパックはどうしたら私たちが循環の輪の外に出られるか、そして悪循環を好循環に転換できるかをたんねんに考察する。
(訳者 杉山 光信)

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