ラトビア近現代史を背景に、大国に翻弄される家族の悲運を通じて、バルト三国の同時代人の生き様を明らかにするもう一つの20世紀史。

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関連ワード
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タイトル
サブタイトル
あるラトビア人家族の物語
著者・編者・訳者
サンドラ・カルニエテ著
 
黒沢歩訳
発行年月日
2014年 2月 21日
定価
3,850円
ISBN
ISBN978-4-7948-0947-6 
判型
四六判並製
頁数
408ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Sandra Kalniete(サンドラ・カルニエテ)
1952年トムスク州トグル村生まれ。
人民戦線の活動家としてラトビアの独立運動を主導したのち、在フランス大使(1997〜2002)、外務大臣(02〜04)、現職は欧州議会議員(09〜)。

内 容

 ユーラシア大陸の西端、バルト海のほとりにあるラトビアは、1991年に旧ソ連からの独立を回復したのち2004年にEUに加盟し、つい先頃、2014年からのユーロ導入が決定したばかりの国である。国の成り立ちを振り返れば、二つの世界大戦とロシア革命を経て、1918年に共和国の成立後、1940年のソ連の侵入、その1年後のドイツによる統治、そして1944年のソ連による再度の占領と、民族は盛衰をきわめた。独ソの狭間で苦渋を味わい、旧ソ連に併合されたバルト三国において、シベリアが影を落とさない家系はないと言われている。それだけに、ペレストロイカ以前の旧ソ連で「シベリア」を語ることはタブーであった。著者は、ラトビアからはるかに遠いシベリアの寒村に生まれ、スターリン死後の「雪解け」を機に、4歳のときに両親に連れられて祖国ラトビアの地を初めて踏んだ。本著は、独立回復以降に入手可能となった古文書と文献資料、さらに家族の日記とシベリア体験者の記録や取材をもとに、旧ソ連における大量流刑の犠牲となった両親と祖父母の足跡を追い、強制収容所と強制移住を追体験する自伝的作品である。近現代のラトビア内外の動きを辿りつつ、歴史に翻弄される家族の悲運を浮き彫りにする本著は、バルト三国の同時代人の生き様を明らかにし、20世紀が残した大きな傷跡に光をあて、ラトビア人の歴史観を理解する糸口を与えてくれる。「シベリアで両親がなによりも恐れたのは、私がラトビア語を忘れること」と話す著者。140年の伝統を誇る、5年に1度行われる大合唱祭を迎えるこの夏、ラトビア民謡の澄んだ響きに、滲む民族の哀しみが聴きとれよう。英語、露語、仏語ほか全12言語に翻訳され、独立回復後においてもっとも幅広い言語で読まれているラトビア文学作品、是非読んでいただきたい。
(訳者 黒沢 歩)

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