「健康」語りと日本社会―リスクと責任のポリティクス
健康グッズ、健康医療、健康生活…、公私両域をまたぐ「健康」言説の生成、亢進、政策化が私たちの暮らしと制度に及ぼす影響
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健康グッズ、健康医療、健康生活…、公私両域をまたぐ「健康」言説の生成、亢進、政策化が私たちの暮らしと制度に及ぼす影響
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- 「健康」語りと日本社会―リスクと責任のポリティクス
- タイトル
- サブタイトル
- リスクと責任のポリティクス
- 著者・編者・訳者
- 高尾将幸著
- 発行年月日
- 2014年 11月 14日
- 定価
- 3,520円
- ISBN
- ISBN978-4-7948-0983-4 C0036
- 判型
- 四六判並製
- 頁数
- 312ページ
著者・編者・訳者紹介
著者-高尾将幸(たかお・まさゆき)-
1980年生まれ。
東京理科大学理学部助教。
専門はスポーツ社会学。
著書(共著)『幻の東京オリンピックとその時代─戦時期のスポーツ・都市・身体』(2009年)、『〈オリンピックの遺産〉の社会学』(2013年)共に青弓社。
1980年生まれ。
東京理科大学理学部助教。
専門はスポーツ社会学。
著書(共著)『幻の東京オリンピックとその時代─戦時期のスポーツ・都市・身体』(2009年)、『〈オリンピックの遺産〉の社会学』(2013年)共に青弓社。
内 容
「健康」という言葉は、新聞や雑誌、そして広告からCMに至るまで、それを目にしない日がないくらい日常にあふれている。通販番組の商品の多くが「健康」関連であることは、もはや定番となっている。また昨今、増大する社会保障費のなかで医療費、そのなかでも慢性疾患の長期的な治療にかかるコストがやり玉に挙げられ、そうしたリスクに対処するさまざまな施策が「健康増進」の名のもとに打ち出されてきた。「生活習慣病」はもとより、内臓脂肪症候群を指す「メタボ」はすっかり定着し、各種健診事業の合言葉にまでなっている。他方で「健康」は、今ある身近な幸せの維持や漠然とした望ましさを、便利に言い表せる言葉ともなっている。「健康であればあとは何もいらない」、「家族の健康が何より大事」、「自分の好きなことをできるのが本当の健康だ」だと率直に言葉にするのも、「健康」とさえ言っておけば他者と簡単に共有することができるし、そのことを私たちは当てにしながら使っているとも言える。客観性が求められる科学や制度のなかで用いられる一方、望ましい生に対する個人的な期待として端的に口に出せる――よく考えてみると、不思議な言葉である。
こうした「健康」をめぐる「語り」の性格を本書では「だらしなさ」と呼んでいるが、実はその語り口には、ある歴史性が存在している。本書の狙いは、「健康」とは何か、どうすれば「健康」になれるのか、といった問いに答えることにはない。むしろ、それとなく社会的な領域と私的な領域とを行き来できてしまうこの記号をめぐる「語り」の質感が、いかにして獲得されてきたのか、また昨今の「健康」の政策化は、果たして私たちの暮らしと制度にどんな変化をもたらしつつあるのかという問いに、出来事や言説の積み重ねを丹念にひもときつつ答えていくことである。
(著者 高尾 将幸)
こうした「健康」をめぐる「語り」の性格を本書では「だらしなさ」と呼んでいるが、実はその語り口には、ある歴史性が存在している。本書の狙いは、「健康」とは何か、どうすれば「健康」になれるのか、といった問いに答えることにはない。むしろ、それとなく社会的な領域と私的な領域とを行き来できてしまうこの記号をめぐる「語り」の質感が、いかにして獲得されてきたのか、また昨今の「健康」の政策化は、果たして私たちの暮らしと制度にどんな変化をもたらしつつあるのかという問いに、出来事や言説の積み重ねを丹念にひもときつつ答えていくことである。
(著者 高尾 将幸)
目 次
まえがき i
序論 ●なぜ、語りとしての「健康」か? 3
・「健康」のだらしなさ 5・リスクと安全性 9
・本書のねらい 16
第1章 ●「健康」語りと制度への問い──本書の視角 21
1 ネオリベラリズム仮説 232 身体のテクノロジー 28
3 統治性論の射程 31
4 問題化・プログラム・テクノロジー 37
5 本書の方法的態度――言表【げんひょう】としての「健康」 40
第2章 ●病気の不在としての「健康」語りとその変質 49
1 「健康」のネガティヴな意味論形式と社会的分立 50・病気の不在としての「健康」 50
・「健康」の社会的な側面 53
2 理念を超えて 59
・加害/被害 59
・健康産業 61
・「健康ブーム」言説の構成 65
・抗【あらが】いとしての「健康」 74
第3章 ●問題化される「老い」とその身体 83
1 「寝たきり老人」問題の浮上とその対策 85・「高齢者」をめぐる医療・保健・福祉施策の概観(戦後から一九八〇年代中ごろまで) 85
・身体と〝加害性〟 90
2 一九八〇年代における「健康」の政策化 98
・民活路線と「健康」 98
・「健康」を調べることとその変化 108
・地域振興、都市経営 114
3 充当されるモノ/コト 121
・スポーツする身体と消費の空間 121
・年齢にとらわれない生き方(エイジレス・ライフ) 130
・エイジズムに抗して 133
・「生きがい」と「健康」 137
・「健康ブーム」言説とその変化 142
第4章 ●手段としての「健康」 153
1 自立と「健康」 157・ADLとQOL 157
・「市民社会」 164
・手段論的転回 170
・共鳴する批判 176
・「高齢者」の脱構築(?) 178
2 リスク、予防、主体性 183
・見いだされる転倒とその予防 183
・産学官 191
・自治体の主体性 193
第5章 ●保険化する保健 199
1 全体的に、かつ個別的に 201・集合的な生と「健康」 201
・「平均寿命」から「健康寿命」へ 204
・国保ヘルスアップモデル事業 210
2 予防と支援をめぐって 214
・〝協働〟としての「介護予防」 214
・保険制度の「限界」 223
・介護の〝加害性〟(?) 227
・連鎖する「知」 234
・先取りされる「望ましい生」 236
3 保健と保険 240
・政治の思惑と「予防重視型システム」 240
・リスク共同体としての保険制度――財の負担と公平性 244
・剥落する社会 252
終章 ●「健康」語りと日本社会 257
1 リスクと責任をめぐって 2582 「健康」の位置価とその効果 262
あとがき 271
参考文献一覧 276