ひとりじゃないよ

著者-
Dr. Elin KELSEY（エリン・ケルシー）
カナダ出身の世界的な環境教育者。
人間と自然の関係を探求する著書多数。
Soyeon KIM（ソイアン・キム）
立体作品を得意としカナダで活躍する韓国人アーティスト。
訳者-光橋翠（みつはし・みどり）
専門は保育・児童学、サステナビリティ教育、野外環境教育。
日本野外生活推進協会公認講師。

　『きみは星のかけら』『ワイルド・アイデア』につづく、新感覚エコロジー絵本シリーズの続編です。今回は、この惑星を覆いつくす「相互依存」のネットワークがテーマです。
　からだをしっかりと支えてくれる重力から、酸素をつくりだしてくれる植物、飲み水を供給してくれる雲、免疫力を高めてくれる極小の微生物まで、わたしたちの生活は自然界の助けなしには１秒だって成り立ちません。ほかの生きものたちもおなじで、足りないもの、やれないことを補いあいながら、地球というおおきな生態系をかたちづくっています。「弱肉強食」「自己責任」なんて絵空事で、助けあいが基本なのですね。どんな生きものも、けっしてひとりぼっちじゃない。たがいに生かし、生かされている。本書はその有機的で壮大なつながりを、最新の科学的知見を織り込んだ詩的な文章と、美しい立体コラージュ作品のコラボで描き出します。
　著者たちはまた、こう懸念してもいます。善意からとはいえ、わたしたちは環境意識を高めようと思うあまり、暗い未来像ばかりを子どもたちにおしつけてはいないだろうか？　たしかに気候危機、森林破壊、生物種の減少、大気や海洋の汚染はきわめて深刻です。でも、暗く悲観的な見通しばかりでは、子どもたちは不安や絶望を感じるばかりで、前にすすめません。問題の重大さをふまえつつも、地球の生態系の驚くべき力を肯定的にとらえなおし、未来をになう子どもたちに伝えていくことも大切でしょう。
　この美しく力強い星は、あらゆる生命の共有地であり、たえず無数の贈りものを生みだして、わたしたちに惜しみなく注いでくれている。そのことを、深い感動とともに思い出させてくれる絵本です。読み終わったらぜひ、お子さんといっしょに野外へ出て、本で紹介されている事例をさがしてみてください。
（編集部）