カフカの代表的寓話『変身』のテレストリアル的解釈を羅針盤に、人類再生の方途をコロナ禍の教訓から導出。著者晩年、畢世の渾身作
※テレストリアル:地上的存在
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カフカの代表的寓話『変身』のテレストリアル的解釈を羅針盤に、人類再生の方途をコロナ禍の教訓から導出。著者晩年、畢世の渾身作
※テレストリアル:地上的存在
- 関連ワード
- 私たちはどこにいるのか 惑星地球のロックダウンを知るためのレッスン
- タイトル
- サブタイトル
- 惑星地球のロックダウンを知るためのレッスン
- 著者・編者・訳者
- ブルーノ・ラトゥール著/川村久美子訳
- 発行年月日
- 2024年 7月 25日
- 定価
- 2,420円
- ISBN
- ISBN978-4-7948-1269-8 C0036
- 判型
- 四六判上製
- 頁数
- 232ページ
著者・編者・訳者紹介
著者-Bruno LATOUR(ブルーノ・ラトゥール)
1947~2022。ホルベア賞、京都賞受賞など、世界的影響力を持つフランスの哲学者・人類学者。アクターネットワーク理論(ANT)の旗手として著名だが、1992年に『虚構の「近代」』を上梓して以来、ライフワークとして近代文明の批判的検討を行った。著書多数。
1947~2022。ホルベア賞、京都賞受賞など、世界的影響力を持つフランスの哲学者・人類学者。アクターネットワーク理論(ANT)の旗手として著名だが、1992年に『虚構の「近代」』を上梓して以来、ライフワークとして近代文明の批判的検討を行った。著書多数。
内容
新型コロナウィルスのパンデミックが引き起こしたロックダウン(都市封鎖)は、世界中の人々に重要な教訓(レッスン)を与えた。自宅に「幽閉される」という経験は、私たちがクリティカルゾーンという厚さ数キロの薄膜(地球生命圏)の中に「閉じ込められている」現実を思い起こさせてくれた。また鉄の檻と見なされていた経済がいとも簡単に休止させられることがわかった。まさにそれは驚きの体験だった。
著者ブルーノ・ラトゥールは今回のロックダウンに近代人にとっての「変身」のチャンスを見出す。既に著者は、過去の著作群を通じて近代体制の問題について次のような議論を展開している。
近代体制とは「普遍的真実としての自然」に最高裁判所の役割を任せ、誰もが自然法に従うことで合意を達成する、政治不在の安易なシステムである。そうした「自然の王国」に住む近代人は、地上世界にあるものを見ることができない。彼らはただ「普遍的真実の世界が地上に内在化したもの」を見ているだけだ。まさに地上との接点を失った状態にある。だから乱獲を続けてきたし、地球環境が未曽有の危機に陥っても不思議なほど無関心でいられる。
そう議論した著者が、本書では近代人に「シロアリ」に変身せよという。シロアリはシロアリ塚に「幽閉されており」、幽閉されているからこそ移動も生息も可能になる。その姿が太古の昔から変わらない生き物のあり方を表しているからだ。
生き物とは、自己を守るために常に十分コントロールされた内部環境のようなものを構築し、自己を含む保護膜的覆いの機能を発揮させるものだ。クリティカルゾーンこそ、生き物が長い年月をかけて集合的に作り出し維持する彼らの「覆い」である。その覆いと地上の生き物との間には太古から続く相互生成の歴史がある。
いま私たちに必要なのは、「発生に関わる関心事」を共有するあらゆるものたちとともに、この相互生成の歴史を紡き続けていくことだ。さらにそうした事実をまるで反映しない近代の政治・経済・社会・宗教の体制を根本から作り直すことだ。そうでなければ人類は生き残れない。そう著者は力説する。
(かわむら・くみこ 環境社会学/科学社会学)
著者ブルーノ・ラトゥールは今回のロックダウンに近代人にとっての「変身」のチャンスを見出す。既に著者は、過去の著作群を通じて近代体制の問題について次のような議論を展開している。
近代体制とは「普遍的真実としての自然」に最高裁判所の役割を任せ、誰もが自然法に従うことで合意を達成する、政治不在の安易なシステムである。そうした「自然の王国」に住む近代人は、地上世界にあるものを見ることができない。彼らはただ「普遍的真実の世界が地上に内在化したもの」を見ているだけだ。まさに地上との接点を失った状態にある。だから乱獲を続けてきたし、地球環境が未曽有の危機に陥っても不思議なほど無関心でいられる。
そう議論した著者が、本書では近代人に「シロアリ」に変身せよという。シロアリはシロアリ塚に「幽閉されており」、幽閉されているからこそ移動も生息も可能になる。その姿が太古の昔から変わらない生き物のあり方を表しているからだ。
生き物とは、自己を守るために常に十分コントロールされた内部環境のようなものを構築し、自己を含む保護膜的覆いの機能を発揮させるものだ。クリティカルゾーンこそ、生き物が長い年月をかけて集合的に作り出し維持する彼らの「覆い」である。その覆いと地上の生き物との間には太古から続く相互生成の歴史がある。
いま私たちに必要なのは、「発生に関わる関心事」を共有するあらゆるものたちとともに、この相互生成の歴史を紡き続けていくことだ。さらにそうした事実をまるで反映しない近代の政治・経済・社会・宗教の体制を根本から作り直すことだ。そうでなければ人類は生き残れない。そう著者は力説する。
(かわむら・くみこ 環境社会学/科学社会学)