さいごの さよなら

著者-Elin KELSEY（エリン・ケルシー）
（PhD）カナダ出身の世界的な環境教育者。
Soyeon KIM（ソイアン・キム）
カナダで活躍する韓国人アーティスト。
身近な素材を用いた立体コラージュ作品を得意とする。
訳者-光橋翠（みつはし・みどり）
博士（社会科学）。サステナブル・アカデミー・ジャパン共同代表。
編著書『幼児のための環境教育』他。

　愛する者の死を悼むのは、人間だけでしょうか？ いいえ、マダガスカルの木々の梢から太平洋の大海原まで、この星のいたるところで、たくさんの動物たちが、弱った仲間によりそい、いたわり、その旅立ちを深く悲しみながら看取っています。
　つれあいや仲間の死にのぞんで大騒ぎする種もいれば、ささやかな供物をそなえて静かに見送る種もいます。本書には、最新の動物研究によって解明された、これら自然界のさまざまな悼み方・弔い方が紹介されています。ゾウは仲間の喪に服し、「墓参り」もします。シャチは弱った身内を支えながら泳ぎます。カラスは同胞の死骸を見つけると、けたたましく鳴き交わします（ただし、こうした動物たちの行動が、人間界の服喪の行動と完全に同じ意味をもつか否かについては、諸説あるようです）。
　もちろん、別離という悲しくつらい経験を扱いながらも、作者たちは決して希望を忘れません。土に還った肉体が大地や川や海に滋養を与え、つぎに生まれてくる新たな命の糧となるさまを描く後半部は、「希望の環境教育」「生命と地球生態系への讃歌」をモットーとする本シリーズの真骨頂といえましょう。
　動物行動学の第一人者マーク・ベコフ博士（『動物たちの心の科学』著者）は、この絵本にこうコメントをよせています。「動物の感情や絆の探究をつうじて、子どもたちが死について語る道を注意深く切りひらいてくれている」。生ある者に必ず訪れる死について、大好きな人やペットとの別れについて、この惑星に満ちている生と死のドラマ、命と愛の連鎖について、お子さんと語りあうよすがとしていただければ幸いです。
（編集部）