「鉄の町」で1人の公務員が女性たちとともに立ち上がる。反骨の記録作家の原点であり、戦後公害闘争史の発端をなす運動の全貌。
ネット書店で注文
「鉄の町」で1人の公務員が女性たちとともに立ち上がる。反骨の記録作家の原点であり、戦後公害闘争史の発端をなす運動の全貌。
- 関連ワード
- 《写真記録》これが公害だ
- タイトル
- サブタイトル
- 北九州市「青空がほしい」運動の軌跡
- 著者・編者・訳者
- 林えいだい著
- 発行年月日
- 2017年 3月 23日
- 定価
- 2,200円
- ISBN
- ISBN978-4-7948-1064-9 C0036
- 判型
- A5判並製
- 頁数
- 192ページ
著者・編者・訳者紹介
著者-林えいだい(はやし・えいだい)
1933年福岡県香春町生まれ。
記録作家。
ありらん文庫主宰。
戦争や朝鮮人強制連行などをめぐる埋もれた史実を掘り起こしてきた。
『実録証言 大刀洗さくら弾機事件──朝鮮人特攻隊員処刑の闇』など著書多数。
半生を描いたドキュメンタリー映画『抗い』が全国公開中。
1933年福岡県香春町生まれ。
記録作家。
ありらん文庫主宰。
戦争や朝鮮人強制連行などをめぐる埋もれた史実を掘り起こしてきた。
『実録証言 大刀洗さくら弾機事件──朝鮮人特攻隊員処刑の闇』など著書多数。
半生を描いたドキュメンタリー映画『抗い』が全国公開中。
内容
* 本書は一九六八年刊『林えいだい写真集 これが公害だ―子どもに残す遺産はなにか』(北九州青年会議所発行)の復刻版です。付録として「青空がほしい」運動の現代的意義を示す解説や資料を付加しました。
著者の記録作家としての原点は公害にある。経済成長が何よりも優先された時代、気がつくと身の回りの自然は汚染され人々の生活は破壊されていた。「人はいつから命よりもカネ儲けが大事になったのか」。その答えを探すためにカメラを手に、この国の不条理を記録してきた。
えいだいさんが生まれ育った福岡県香春町は、炭坑節にも唄われた「石炭とセメントの町」である。大学を中退し、六年半勤務した香春町の教育委員会を辞めて「鉄の町」 戸畑市(現北九州市戸畑区)の社会教育課に勤務したのは一九六二年、えいだいさんが二十九歳の時だった。転居からほどなくして、幼い二人の娘に喘息の症状が現れた。「大変なところに引っ越した」と思ったそうだ。当時の北九州工業地帯は「七色の煙」と形容され、工場からの降灰で洗濯物が外に干せない状況だった。ところが聞こえてくるのは「町の繁栄は企業のおかげ」という声。煙を吐き続ける工場を前に、誰も不満を口にできない。戸畑市の職員だったえいだいさんの、公務員の枠に収まりきれない反骨魂に火がついた。「公害のしわ寄せが真っ先に及ぶのは、家庭や育児をあずかる女性たちだ」。地元の女性たちと始めた運動は、やがて「青空がほしい」という市民キャンペーンとなり、全国の公害克服運動へと繋がった。
公害は人間の生命や尊厳を軽視し、経済発展を優先する国家と企業のもたれあいによって生まれる。今の日本で、その体質がなくなったと言えるだろうか。東日本大震災による福島第一原発事故を経験した現在、社会のための技術が利益追求の道具となり、人の命や健康を犠牲にするような使われ方は許されないことを私たちは身をもって学んだ。「人間の英知は科学を創造し、発展させた。しかし、それで人間はしあわせになったであろうか」。えいだいさんは本書の中で、こう指摘している。この言葉には今を生きる人々への厳しい問いかけが込められている。
(本書「復刻によせて」より/西嶋真司 映画『抗い 記録作家・林えいだい』監督)
著者の記録作家としての原点は公害にある。経済成長が何よりも優先された時代、気がつくと身の回りの自然は汚染され人々の生活は破壊されていた。「人はいつから命よりもカネ儲けが大事になったのか」。その答えを探すためにカメラを手に、この国の不条理を記録してきた。
えいだいさんが生まれ育った福岡県香春町は、炭坑節にも唄われた「石炭とセメントの町」である。大学を中退し、六年半勤務した香春町の教育委員会を辞めて「鉄の町」 戸畑市(現北九州市戸畑区)の社会教育課に勤務したのは一九六二年、えいだいさんが二十九歳の時だった。転居からほどなくして、幼い二人の娘に喘息の症状が現れた。「大変なところに引っ越した」と思ったそうだ。当時の北九州工業地帯は「七色の煙」と形容され、工場からの降灰で洗濯物が外に干せない状況だった。ところが聞こえてくるのは「町の繁栄は企業のおかげ」という声。煙を吐き続ける工場を前に、誰も不満を口にできない。戸畑市の職員だったえいだいさんの、公務員の枠に収まりきれない反骨魂に火がついた。「公害のしわ寄せが真っ先に及ぶのは、家庭や育児をあずかる女性たちだ」。地元の女性たちと始めた運動は、やがて「青空がほしい」という市民キャンペーンとなり、全国の公害克服運動へと繋がった。
公害は人間の生命や尊厳を軽視し、経済発展を優先する国家と企業のもたれあいによって生まれる。今の日本で、その体質がなくなったと言えるだろうか。東日本大震災による福島第一原発事故を経験した現在、社会のための技術が利益追求の道具となり、人の命や健康を犠牲にするような使われ方は許されないことを私たちは身をもって学んだ。「人間の英知は科学を創造し、発展させた。しかし、それで人間はしあわせになったであろうか」。えいだいさんは本書の中で、こう指摘している。この言葉には今を生きる人々への厳しい問いかけが込められている。
(本書「復刻によせて」より/西嶋真司 映画『抗い 記録作家・林えいだい』監督)