日本にも広がる異文化排斥、異質性排斥の集団的感情。その蔓延を断ち切り共生の地平を拓くための歴史・社会・政治分析
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日本にも広がる異文化排斥、異質性排斥の集団的感情。その蔓延を断ち切り共生の地平を拓くための歴史・社会・政治分析
- 関連ワード
- 野蛮への恐怖、文明への怨念 「文明の衝突」論を超えて「文化の出会い」を考える
- タイトル
- サブタイトル
- 「文明の衝突」論を超えて「文化の出会い」を考える
- 著者・編者・訳者
- ツヴェタン・トドロフ著 大谷尚文・小野潮訳
- 発行年月日
- 2020年 7月 22日
- 定価
- 3,850円
- ISBN
- ISBN978-4-7948-1154-7 C0036
- 判型
- A5判上製
- 頁数
- 328ページ
著者・編者・訳者紹介
著者 Tzvetan TODOROV(ツヴェタン・トドロフ、1939-2017)
ブルガリア出身のフランスの文芸理論家、思想史家。当初は構造主義的文学理論を代表する論者として知られたが、世界の中の人間を直接的に論じる著述を、他者論、民主主義論、絵画論といった幅広い領域をフィールドとして次々と発表し、過去と対話しつつ現代を思考する姿を見せる。
ブルガリア出身のフランスの文芸理論家、思想史家。当初は構造主義的文学理論を代表する論者として知られたが、世界の中の人間を直接的に論じる著述を、他者論、民主主義論、絵画論といった幅広い領域をフィールドとして次々と発表し、過去と対話しつつ現代を思考する姿を見せる。
内容
今日、世界中の人間の往来がますます頻繁になり、生まれ育った場所を去り、そもそも自分の生まれ育った土地ではない国に、しかも自分と言語・文化を異にする人々の住む地域に生活しにいく人々がどんどん増加している。しかしそれと並行して、それぞれの国において、もともとそこに居住していた人々と新しくその社会に入ってくる人々との軋轢が激しくなりつつあり、その軋轢が思いもかけない形で爆発することもある。
二度の世界大戦の発火点となったヨーロッパでは、大戦の惨禍によるトラウマが大きな力となり、ヨーロッパ連合が結成されるに至り、長年ヨーロッパ世界において対立を続けていた独仏を中心として、互いの間で武力を発動して争うことのない空間を生み出したが、今度はヨーロッパにその外部から押し寄せる人々とそもそものヨーロッパ人との間の軋轢が大きな問題となっている。その軋轢は、新しくヨーロッパにやってきた人々がイスラム文化圏出身者であることによって、ヨーロッパ人にとっては、異文化圏出身の「野蛮人たち」に自らの文化が脅かされるような恐怖を抱かせ、それが移民排斥、イスラム排斥の感情を呼び起こし、近年ヨーロッパ各国で観察される右翼ポピュリズム政党の勃興の背景になっている。こうした状況は日本にも無縁のものではない。
新たに日本社会にやってくる人々を、自分たちと同様の人間と認めつつ、社会のなかで共生する術を学ぶことは今後の日本にとっても喫緊の課題と考えねばならない。故国ブルガリアからフランスに移住し、「異郷に生きる人」の眼差しでフランス社会を見つめ続け、「文化の出会い」「自己と他者」の問題について生涯考え続けたトドロフによる本書は、こうした新たな状況を生きるわれわれにとっても大きな指針となってくれるだろう。
(おおたに・なおふみ/おの・うしお 共にフランス文学)
二度の世界大戦の発火点となったヨーロッパでは、大戦の惨禍によるトラウマが大きな力となり、ヨーロッパ連合が結成されるに至り、長年ヨーロッパ世界において対立を続けていた独仏を中心として、互いの間で武力を発動して争うことのない空間を生み出したが、今度はヨーロッパにその外部から押し寄せる人々とそもそものヨーロッパ人との間の軋轢が大きな問題となっている。その軋轢は、新しくヨーロッパにやってきた人々がイスラム文化圏出身者であることによって、ヨーロッパ人にとっては、異文化圏出身の「野蛮人たち」に自らの文化が脅かされるような恐怖を抱かせ、それが移民排斥、イスラム排斥の感情を呼び起こし、近年ヨーロッパ各国で観察される右翼ポピュリズム政党の勃興の背景になっている。こうした状況は日本にも無縁のものではない。
新たに日本社会にやってくる人々を、自分たちと同様の人間と認めつつ、社会のなかで共生する術を学ぶことは今後の日本にとっても喫緊の課題と考えねばならない。故国ブルガリアからフランスに移住し、「異郷に生きる人」の眼差しでフランス社会を見つめ続け、「文化の出会い」「自己と他者」の問題について生涯考え続けたトドロフによる本書は、こうした新たな状況を生きるわれわれにとっても大きな指針となってくれるだろう。
(おおたに・なおふみ/おの・うしお 共にフランス文学)